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中東情勢による「ナフサショック」が住宅建築に与える影響とは

  • 執筆者の写真: 建物ラボ
    建物ラボ
  • 6月8日
  • 読了時間: 12分

断熱材・塗料・浴室・接着剤・塩ビ管まで、家づくりの現場で起きていること


2026/6/8時点での状況

ここ最近、住宅建築やリフォームを検討している方にとって、非常に気になるニュースが続いています。

それが、中東情勢の緊迫化をきっかけとした「ナフサショック」です。

建築会社、工務店、住宅メーカーなど、ヒアリングをしていると非常に会社によって対応も異なってきております。

「ナフサ」と聞いても、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。

しかし、住宅建築の現場では、このナフサが非常に重要な存在です。

ナフサとは、原油を精製する過程で得られる石油化学製品の基礎原料です。

このナフサから、プラスチック、樹脂、接着剤、塗料、断熱材、塩ビ管、シーリング材、床材、クロス関連部材など、住宅に使われる多くの材料が作られています。

つまり、ナフサの供給が不安定になると、住宅建築に使う材料の価格が上がるだけでなく、場合によっては「商品が入らない」「納期が読めない」「工事が進まない」という事態につながります。


今回は、住宅建築・リフォームを検討している一般のお客様向けに、現在起きているナフサショックの影響と、今後どのように準備すべきかを分かりやすく解説します。


1. まず起きたのは、断熱材や塗料の値上げ


ナフサショックの影響として、最初に分かりやすく表面化したのが、断熱材や塗料などの値上げです。

住宅で使われる断熱材には、石油由来の原料を使っているものが多くあります。

たとえば、発泡系の断熱材、ウレタン系断熱材、ポリスチレンフォーム系断熱材などは、原油・ナフサ・石油化学原料の価格や供給状況に大きく影響を受けます。政府からは在庫は問題ないと言われておりますが、実際にはアメリカからの原油の代替輸入が激増しており、中東より輸入するよりも割高です。航路の長さ・パナマ運河などコスト高なのは明らかです。

断熱材は、家の性能を左右する非常に重要な材料です。

現在の住宅では、省エネ性能、断熱等級、ZEH水準、GX志向型住宅など、断熱性能を高める流れが強まっています。

そのため、昔よりも断熱材の使用量が増え、住宅全体のコストに占める割合も大きくなっています。

断熱材が値上がりすると、単純に「材料費が少し上がる」という話では済みません。

壁、天井、床、基礎、屋根など、住宅全体に使う材料なので、建物全体の見積もりにじわじわ効いてきます。また、塗料も同じです。

外壁塗装、屋根塗装、木部塗装、鉄部塗装、防水工事など、塗料は新築にもリフォームにも欠かせません。

塗料には樹脂、溶剤、添加剤などが使われており、これらの多くが石油化学系の原料と関係しています。

そのため、ナフサや有機溶剤の供給が不安定になると、塗料メーカーや施工会社の仕入れ価格が上がります。

さらに、シンナーや溶剤系材料の価格上昇・供給不安も重なると、外壁塗装や防水工事の見積もりにも影響が出ます。


お客様から見ると、

「半年前に聞いた金額と違う」

「以前の見積もりより高くなっている」

「なぜこんなに値上がりするのか分からない」

という印象を持たれるかもしれません。

しかし、現在の住宅業界では、木材だけでなく、断熱材、塗料、接着剤、樹脂部材、配管材など、広範囲で価格変動が起きています。

これが、今回のナフサショックの怖いところです。


2. ナフサショックにより、TOTOの浴室で一時的な受注見合わせが発生


今回のナフサショックで、住宅業界に大きな衝撃を与えたのが、TOTOのシステムバス・ユニットバスに関する一時的な受注見合わせです。2026年4月13日TOTOはシステムバス・ユニットバスの新規受注を当面停止すると発表しました。原因は中東情勢の悪化による原油・ナフサなど石油化学原料の供給不安定化で、浴槽やパネル、断熱材など樹脂系部材の調達に影響が出たため、との事です。実際に壁パネルのカラーによる出荷制限もあったとのことです。


浴室とナフサは、一見すると関係が薄いように思えます。

しかし、ユニットバスには多くの化学系材料が使われています。

たとえば、浴室の壁パネル、天井パネル、床材、浴槽、樹脂部品、コーティング材、接着剤、シール材などです。

これらの部材には、樹脂、接着剤、有機溶剤、コーティング材料などが使われます。

つまり、浴室は「水回り設備」であると同時に、「化学系建材の集合体」でもあります。

3. 各メーカーでも受注停止・納期調整・価格改定の動きが発生

TOTOだけでなく、他の住宅設備メーカーや建材メーカーでも、受注の見合わせ、納期回答の停止、納期調整、価格改定などの動きが出ています。

ここで重要なのは、「すべてのメーカーが完全に止まっている」という意味ではありません。

メーカーごとに状況は異なります。

あるメーカーでは、一部商品の受注を見合わせる。

別のメーカーでは、納期回答を一時停止する。

また別のメーカーでは、価格改定を行う。

あるいは、注文が集中しすぎた場合に納期調整を行う。

このように、影響の出方はメーカーや商品によって違います。

しかし、住宅建築は一社のメーカーだけで完成するものではありません。

キッチン、浴室、トイレ、洗面、給湯器、サッシ、断熱材、配管、電気部材、内装材、塗料、防水材、接着剤など、非常に多くのメーカーと部材が関係します。

そのため、どこか一つの部材が遅れるだけでも、全体工程に影響が出ることがあります。

たとえば、浴室が入らなければ大工工事や内装工事の段取りが変わります。

配管材が入らなければ設備工事が進みません。

接着剤が不足すればクロス工事や床工事が止まります。

塗料が入らなければ外壁塗装や防水工事が遅れます。

住宅建築では、「たった一つの部材不足」が、工期全体を遅らせることがあります。

この点が、一般のお客様にはなかなか見えにくい部分です。

家づくりは、図面ができて、契約して、職人さんが現場に入れば自然に進むように見えるかもしれません。

しかし実際には、裏側で大量の材料手配、メーカー発注、納期管理、職人手配が連動しています。


そのどれか一つが崩れると、工程全体を組み直す必要が出てきます。

TOTOのような大手メーカーが一時的に受注を見合わせるということは、住宅業界にとって非常に大きな出来事です。その結果、もう一つの大手メーカーのLIXILのユニットバスに受注が集中し、LIXILのユニットバスの納期が未定となってしましました。その後、その他メーカーの浴室にもドミノ倒しのように連鎖的に納期未定となってしまいました。各メーカーは需要を予測して、ギリギリ足りる量しか生産計画を立てない為です。

ただし、ここで大切なのは、必要以上に不安になることではありません。

メーカー側も生産・出荷体制の維持や原材料の確保に動いており、状況は日々変化しています。


一時的に止まったものが段階的に再開するケースもあります。

LIXILの浴室は、記事の現状の日程では3~4週間の納期感となっており、TOTOも数日後に通常納期に戻るとの事です。

問題は、「今まで通りの納期に戻りつつあるが、金額は元には戻ってこない」という事です。以前の金額に戻らないどころか、今後も更なる急激な値上げが見込まれるのです。


4. 今は接着剤、クロスのり、塩ビ管の欠品による工事遅れも注意


現在、現場で特に注意したいのが、接着剤、クロスの接着剤、塩ビ管などの不足や納期遅れです。戸建て新築工事でもそれらの資材の遅延や欠品で、工期の延長が発生しています。

接着剤は、住宅のさまざまな場所で使われています。


フローリング、建具、造作材、内装材、パネル、設備部材、クロス、床材、巾木、化粧材など、接着剤がなければ施工できない場面は非常に多いです。

特にクロス工事では、壁紙そのものだけでなく、クロスのりや下地処理材などが必要です。

壁紙はあっても、施工に必要な接着剤や副資材が不足すれば、工事は進められません。

内装工事は、家づくりの終盤に行われることが多い工程です。

そのため、クロス工事が遅れると、照明器具、設備器具、クリーニング、検査、引き渡しまで一気に影響する可能性があります。


また、塩ビ管の不足も大きな問題です。

塩ビ管は、給排水、排水、通気、設備配管などに使われる重要な材料です。

新築でもリフォームでも、配管がなければ水回り工事は進みません。

塩ビ管は、単なる「パイプ」ではありません。

キッチン、浴室、トイレ、洗面、洗濯機、給湯器、屋外排水など、生活に必要な水回りを支える基本材料です。

この塩ビ管や継手が不足したり、価格改定されたりすると、設備工事の見積もりや工程に直接影響します。

配管材が入らない場合、現場を進めたくても進められません。

大工さんや設備屋さんの予定を押さえていても、材料がなければ工事はできないのです。

また、接着剤や塩ビ管のような材料は、完成後には見えなくなります。

お客様からすると、キッチンやお風呂のように目立つ商品ではありません。

しかし、実際には住宅を支える重要な材料です。

今回のナフサショックは、目に見える住宅設備だけでなく、目に見えない副資材や配管材にも影響している点が非常に重要です。


5. 各建築材料の大幅値上げにより、300万円ほどの値上げ要因になる可能性も


では、今回のナフサショックによって、住宅の総額はどのくらい上がるのでしょうか。

これは、建物の大きさ、仕様、地域、施工会社、契約時期、使うメーカー、断熱性能、設備グレード、外構工事の有無によって大きく変わります。

そのため、すべての住宅で一律に「いくら上がる」とは言えません。

しかし、住宅全体で考えると、値上げ要因は一つではありません。


断熱材が上がる。

塗料が上がる。

接着剤が上がる。

塩ビ管が上がる。

住宅設備が上がる。

物流費が上がる。

職人手配や工程変更のコストが増える。

納期遅れによって仮住まいや引き渡し時期に影響が出る。

補助金の期限に間に合わないリスクが出る。

このように、材料単体の値上げだけでなく、建築全体のコストに波及していきます。

特に注文住宅や大規模リフォームでは、もともとの工事金額が大きいため、数%の上昇でも金額にすると大きくなります。


仮に3,000万円から4,000万円規模の住宅工事で、全体的に5%から10%程度のコスト上昇が発生すれば、150万円から400万円ほどの差になる可能性があります。


つまり、条件によっては、300万円前後の値上げ要因になることも十分に考えられます。

様々な業種の新築業者のヒアリングをすると、200~300万くらいの金額UPを見込んでお施主様への下話をしている、既に見込んで見積を出しているという業者が多かったという事です。


ここで注意したいのは、「待てば安くなる」とは限らないことです。

以前は、ウッドショックが落ち着けば建築費も落ち着くのではないか、という期待がありました。

しかし実際には、木材以外の材料、人件費、物流費、設備費、エネルギーコストなど、さまざまな要因で住宅価格は高止まりしています。

現在の日本はインフレ下です。過去のデフレは30年続きました。インフレも一過性とはとても言えない状況です。

今回のナフサショックは、そこにさらに石油化学系材料の供給不安と値上げが重なった形です。


そのため、「もう少し待てば安くなるかもしれない」と考えている間に、インフレによる価格改定は続いていくと想定されます。

住宅建築では、タイミングが非常に重要です。

特に、補助金を使いたい方、住宅ローン金利が気になる方、子どもの入学や転勤などで入居時期が決まっている方は、価格だけでなく、納期と工期も含めて判断する必要があります。


6. まとめ:今やるべき対策と準備

今回のナフサショックで分かったことは、住宅建築は世界情勢の影響を大きく受けるということです。

中東情勢、原油価格、ナフサ供給、石油化学原料、メーカーの生産体制、物流、為替、国内の人手不足。

これらはすべて、最終的に住宅の価格や工期に関係してきます。

では、これから家づくりやリフォームを考えている方は、何を準備すればよいのでしょうか。

まず大切なのは、早めに情報を集めることです。

「まだ先だから大丈夫」と思っていても、材料や設備の納期は急に変わることがあります。

特に浴室、キッチン、トイレ、洗面、給湯器、サッシ、断熱材、塩ビ管、クロス、塗料などは、早めに確認しておくべきです。

次に、見積もりの有効期限を確認することです。

建築会社やリフォーム会社の見積もりには、有効期限が設定されていることが多いです。

原材料価格が大きく変動している時期は、以前の見積もりがそのまま使えないこともあります。

また、契約前には、価格改定があった場合の扱いを確認しておくことも大切です。

早めの見積取得、価格改定の有った場合の取り扱いを確認したうえで、早めの発注をすることで見積をFIXする事が重要です。

契約後に材料価格が大幅に上がった場合、誰がどこまで負担するのか。

納期が遅れた場合、工期や引き渡し日はどうなるのか。

このあたりは、事前に確認しておくことでトラブルを防ぎやすくなります。

さらに、代替品の検討も重要です。

希望していたメーカーや商品が入らない場合、別メーカーの商品で対応できるのか。そのメーカーに拘りはあるのか?金額を優先したいのか?

グレードを少し変えることで納期を短縮できるのか。

仕様変更によって補助金の条件に影響が出ないか。

このような判断には、住宅建築の知識が必要です。



価格高騰を緩和する手段として、補助金を使う事も有効です。

みらいエコ住宅、先進的窓リノベ、給湯省エネ、自治体補助金などがございます。

補助金申請が工期遅延に影響されることもあります。

ですので、補助金を前提にリフォームや新築を考えている方は、商品選定、契約、発注、工事時期、申請スケジュールを早めに整理する必要があります。

最後に一番大切なのは、「価格だけで判断しないこと」です。

今の住宅建築では、安い見積もりだけを見て判断すると、あとから追加費用や納期遅れで困ることがあります。

大切なのは、見積もり金額だけでなく、材料の確保状況、メーカーの納期、工事スケジュール、補助金対応、代替案の有無まで含めて判断することです。

家づくりやリフォームは、人生の中でも大きな買い物です。

だからこそ、今のように材料価格や納期が不安定な時期には、早めに計画を立て、信頼できる専門家に相談することが大切です。

ナフサショックは、単なる一時的なニュースではありません。

断熱材、塗料、浴室、接着剤、クロスのり、塩ビ管など、住宅のあらゆる部分に関係する問題です。


これから新築やリフォームを検討している方は、

「いつ建てるか」

「どのメーカーを使うか」

「どの材料を選ぶか」

「補助金に間に合うか」

「値上げ前にどこまで進められるか」

を早めに確認しておきましょう。


住宅建築は、情報を知っているかどうかで、費用も工期も大きく変わります。

今後も建築材料や住宅設備の価格・納期は変動する可能性がありますので、最新情報を確認しながら、無理のない計画を立てることをおすすめします。


 
 
 

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